細い観測井戸や地中採熱パイプの鉛直温度プロファイル測定には、熱電対やPT温度センサを上下させ手動測定したり、熱伝対を何十本も束ねて観測孔に押し込む方法がとられていました。
光ファイバー1本で多点温度測定を行う装置も市販されていますが、価格が高い、温度測定精度が低い、装置が大掛かりで屋外現場計測に不向などの理由で温度検層にはあまり利用されません。
今回ご紹介する温度計は、最大60点の温度センサを、1本のケーブル(ケーブル総延長150m以内)で連結して、デジタル伝送で一気に温度を計測するワン・ワイヤー式の温度検層器です。
多点温度検層器は、温度を測定する温度センサーケーブルと計測・記録・通信を行う温度ロガー部から構成されます。
特徴は,温度センサー外形が18mmと細身で、口径25mmの測定管に挿入できる。50点を約1秒で測定し、誤差±0.2℃。12Vバッテリで動く省電力設計。RS-485通信ポートで無線機や携帯パケット通信で遠隔計測に対応。などです。
検層ケーブルには指定された間隔で、温度センサーが取り付けられています。センサの間隔は標準仕様で2mピッチ×51点=長さ100mです。センサ個数は60個まで増やし、ケーブル長も150m程度まで延ばすことができます。
センサ間隔の狭い方は,凍土の凍結深観測用に10cmピッチで製作した例もあります。幅の広いほうは,地中熱の長期モニタリング用に、深度100mまで20m間隔で6点のケーブルもありました。なお、この装置の理論上の最大センサ個数は76点(2mピッチで150m分)ですが、製品として供給しているものは最大60点が上限です。
データロガーは、この温度検層ケーブル専用で、最小1分間隔で,温度を測定します。データはSDカード又はRS-485通信経由で取り出すことができます。シリアル通信の無線機や携帯パケット通信機を接続し、遠隔監視やモニタリングも可能です。
一番多く使われる用途は、地中熱利用の採熱井戸の温度検層モニタリングです。地熱を利用するための熱交換パイプ脇の、温度測定用25mmポリエチレン管に温度検層ケーブルを挿入します。
ボーリング深度100mで2m間隔で測定するパターンが標準です。設置当初に熱量評価のTRT試験中は、1分間隔の計測で2週間ほど測定し、その後の長期評価では10分〜1時間ピッチで2年ほど計測を行います。
従来は、鉛直方向の温度分布を測定するために、細身の熱電対を20本ほど束にして、細いパイプに突っ込んでいました。温度検層ケーブルを使うことで測点が50点に増えより詳しい熱の流れが確認できるようになりました。
次の写真は、従来の熱電対ケーブルと多点温度検層ケーブルのボリュームの違いを比較したものです。深度100mまでの計測で、熱電対は20mピッチ×7点分の計測でも延べ500m以上のケーブルが必要です。多点温度検層ケーブルは100mのケーブルで、2mピッチ×51点のデータが得られます。
屋外でバッテリ駆動で長期の自動観測ができるメリットを生かし、冬季の凍土の温度計測に用いられる場合もあります。温度検層ケーブル自体は、受注生産品なので、ピッチや個数はある程度自由が利きます。
凍結温度の測定用としては、地盤凍結工法の温度管理に用いることも可能です。細かい間隔でピッチで、0℃付近の凍結温度を精度よく長期連続測定できる特徴があります。無線機やモバイルルータと組み合わせれば、凍結止水管理を遠隔リアルタイムに行えます。
1本の電線に多数の温度センサを接続して、計測値をデジタル信号で伝送します。温度センサはモールドされ水深100mの水圧に耐えるようになっています。
センサを連結する電線は3心で、途中の分岐も可能です。但し、ケーブル延長が長くなると、信号が減衰し計測ができなくなったり、ポンプの動力線からの商用電源ノイズにより温度計測値が乱れるなどの問題が発生します。
センサ部と地上延長ケーブルを合計した、ケーブル総延長の限界は150mが目安となります。
温度検層ロガーを地中熱利用井戸の試験に使用した状況です。
温度測定用の25mmポリエチレン管に温度検層ケーブルを挿入し、地上部でケーブルをジョイントボックスで延長し、データロガーに接続しています。ポリ管にはエチレングリーコール系の不凍液が充填されていました。
データロガーと電源の乗用車用バッテリ(12V×38Ahクラス)は、樹脂製の衣装ケースに入れています。10分に1回の計測で、バッテリで概ね1月持ちます。この現場では、FOMA通信装置は接続していないため、データはSDカードで回収しています。
挿入前の温度検層ケーブル | 温度センサ部の大きさ | 温度検層ケーブルの挿入作業 |
ケーブル挿入部の拡大 | 検層ケーブルの地上部延長 | データロガーは衣装ケースに収納 |
SDカードやRS-485通信で取得できるデータは、CSV形式のカンマ区切りのテキストデータです
深度別にも時間的にも細かいデータが得られるため、地下の熱エネルギーや地下水の流れの空間的、時系列的な詳細な解析が可能になります。
●深度100まで2mピッチで、標準51点の温度を1本のケーブルで測定。自動計測にも対応。
●温度測定部の最大外形が18mmと細身で、口径25mmの測定管に挿入できる。
●50点を約1秒で測定します。相対誤差±0.2℃の高精度計測が可能。
●12Vバッテリで駆動する省電力仕様なので、AC電源が無いところでソーラ運用も可能。
●ロガーはRS-485通信ポートを持ち、無線機や携帯パケット通信で遠隔計測にも対応。
ロガーとセンサケーブルの標準スペックをまとめました。
項目 | 仕様 |
---|---|
【温度ロガー部】 | |
型 式 | GTL-100H(Geo Temperature Logger) |
計測方式 | ワン・ワイヤー計測 (3線式バス型ネットワーク) |
測定範囲 | -30〜70℃(分解能0.1℃) ロガー動作温度範囲は-10〜50℃ |
測定精度 | センサ間相対誤差±0.2℃以内 0〜50℃の絶対誤差±0.5℃以内 |
計測点数 | 温度51点(標準最大60点) オプションで気温又はロガー温度1点追加可能 |
計測時間間隔 | 標準60分間隔(正時計測) 1,5,10,30分,1,2,3,6,12,24h選択可能 |
データ記録形式 | CSV形式テキストファイル (日付,時刻,温度51点,気温,バッテリ電圧) |
記録容量 | 内部フラッシュメモリ:4000データ(SDカートにコピーして回収) |
インタフェース | 外部通信ポート:RS-485(N81N 9600bps) |
電源 | DC10.5〜18V,12V時×50mA (12V×7.2Ahの小型シールドバッテリで約6日) |
寸法・重量 | W147×D142×H66mm(突起物含まず) 約630g |
【検層ケーブル部】 | |
ケーブル長 | 110m(温度測定部100m) (最大ケーブル延長150m以内) |
測定点数 | 標準51点(標準最大60点) |
センサ間隔 | 標準2mピッチ (先端から順に100m,98m,…,2m,0m) 最小10cm、最大20m間隔 |
材質 | 温度センサカバー:PVC樹脂 ケーブル被覆:PVC混合材 |
寸法・重量 | 温度センサ部φ18mm×L=80mm, ケーブルφ7mm×L=105m,重量約15kg |
ロガー本体と温度検層ケーブルは、細いマイナスドライバーで端子接続しますDC12V電源を接続すれば起動します。RS-485も端子接続となります。 ⇒簡易説明書はこちら
ロガーの通信機能はRS-485インタフェースです。特別な通信プロトコルは無く、9600bps-N81XNの通信条件でテキストベースの簡単なコマンドでCSV形式のデータが得られます。
【通信コマンド例】
現在温度の取得 @CA ⇒@CA0,12.5,11.8,....中略60点の温度..,12.8 末尾はバッテリ電圧
⇒詳細説明書はこちら
多点温度検層ロガー GTL-100H本体 |
温度検層ケーブル 標準 2m間隔×51点 深度100m+地上10m |
地上ケーブル延長 延長ボックス接続 |
屋外用計測ボックス AC,DC電源対応など |
¥220,000円 | ¥300,000円 | \4,000+¥300円/m | ¥100,000円〜 |
ロガーは標準在庫品ですが、ケーブル部は「センサ個数、配置、長さ」指定の受注生産ですので、仕様によっては納期1〜3ヶ月かかる場合があります。
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