屋外に設置される圧力式水位計や投込式水位計の、湿気対策、雷防護と気圧補正を行う中継端子箱です。
•水位計の湿気・雷対策も行う中継端子ボックスです。
•外気を遮断し大気圧を伝えるベローズ機構で、投げ込み式水位計本体への湿気の進入を防ぐ。
•ボックス内の乾燥剤の交換周期を長くでき、メンテナンス手間が省けます。
•高価な大気開放パイプ入ケーブルを引き回さず、安価な一般ケーブルに中継。
•ボックス内には避雷素子を内蔵。誘導雷被害の多い水位計を保護します。
•電圧出力型水位計のDC12V用と電流出力型水位計対応のDC24V用があります。
【大気圧開放中継ボックスの構造と原理】
⇒3線式と2線式の水位計の接続例はこちらも参照
普段意識しませんが、地上にいる我々の体には、常に空気の重さ≒圧力がかかっています。その力は、1平方メートル当たり約10トンです。
空気の圧力は1気圧です。最近は1013hPa(ヘクトパスカル)単位で呼ばれます。高度1万メータを飛ぶ飛行機の外の気圧は、地上の約4分の1の260ヘクトパスカルですが、機内は地上の8割ほどの0.8気圧(約830hPa)に調整されています。
上の画像は、機内で封を切って飲んだペットボトルが、地上に戻った後の様子です。地上と機内の0.2気圧の差でペットボトルが潰れています。
この機内の0.2気圧≒約200hPaの差は、水深に換算すると[200hP×10.1974mmH2O/hPa=2039mmH2O]です。ペットボトルを水深2mに沈めた時に掛かるの水圧です。飛行機に乗ったとき耳が痛くなるのは、この圧力が耳の鼓膜に働くからです。
地上の気圧は約1気圧ですが、高気圧や低気圧が近づくと気圧が変化します。日々の気圧の変動幅は通常20hPa、台風や爆弾低気圧が近づくと50hPaくらい急変します。これは水深に換算すると20cmから50cmの水圧変化です
投げ込み式水位センサーの原理は、水面の位置を圧力センサで計測します。水面には大気の圧力も掛かっています。この大気圧をキャンセルするために水位計には大気開放の仕組みがあります。
まず、圧力センサの仕組み。基準圧力とセンサの構造によって、大まかに4つに分けられます。
基本的に圧力の測定は2点の圧力差を比較する相対測定ですので、絶対圧センサもゲージ圧センサも、2点の圧力の片側の基準が違うだけで、全て差圧センサとも言えます。
•真空の圧力ゼロが基準の絶対圧センサ
•大気の1気圧が基準のゲージ圧センサ
•大気圧に近い気体を封入したゲージ圧センサ(通称シールドゲージ圧センサ)
•2点間の圧力差を計る差圧センサ
圧力式水位計の原理は、ゲージ圧センサで、大気圧を基準として反対側の流体の圧力を測ります。このゲージ圧センサを水中に入れ、片側が水、片側wをパイプで水面まで伸ばした仕組みの圧力センサが、一般に投げ込み式水位計と呼ばれます。
大気開放パイプを持たない、密閉型のシールドゲージ型の水位計もありますが、こちらは、水圧計や間隙水圧計と呼ばれることが多いようです。
圧力式水位計は投げ込み式水位計とも呼ばれ、センサを水中に投入し、大気圧を基準にして水圧を計測します。投げ込み式水位計は原理的に気圧変動の影響を受けます。 大気圧は低気圧と高気圧の移動により日々変化します。この大気圧変動を補正するため、 水位計のケーブルには、空気の圧力を水中の圧力センサに伝えるための大気開放パイプと呼ばれる通気管が入っています。
水面を押す大気圧は、細いチューブを通して水位計の先端まで届きます。外から水面を押す気圧と、水圧センサの背面の気圧が相殺されるため、気圧が変わっても水圧の計測値に影響が出ません。
また、センサ内の空気は温度変化で膨張・収縮するため、センサを密閉していると、内部の圧力が変化し、見かけの水位変動として表われます。大気開放パイプは、この空気の膨張圧力も外に解放する機能も持ちます。
次ぎは、河川水位の計測で、大気開放が正常に行われなかった例です。大気開放ケーブルが70mと長く屈曲。さらに黒い電線管に直射日光が当たり高温になる環境です。 ほぼ一定している河川水位が、昼太陽が昇と急に下がり、夜元に戻るような動きを繰り返しています。
原因は水位や気圧の変化ではありません。日光でケーブルが加熱され、大気開放パイプの中の空気が膨張。ケーブルが長く曲がっていたため、通気が不十分でした。圧力開放パイプの中の結露で水が溜まり、空気の流通を阻んでいた可能性もあります。
対策として、水位計の近くに大気圧開放ボックスを設置。そこから先を通常電線で延長したら、正常な水位が測れるようになりました。
圧力式水位センサーの大気開放パイプを塞いだ状態で計測すると、概ね次のような測定誤差が出ます。
•通常の気圧の変動で±200mmH2Oの水位変動。(気圧1hPa当たり水深10.2mm)
•大型台風接近で気圧50hPa変動で、見かけの水位も約500mm変わる。
•温度変化でセンサ内部の空気の膨張・収縮し±100mmH2O程度の変動あり。
気圧変化は水深換算で±200mm、最大でも±500mmです。この誤差を無視できる用途なら気圧補正は不要です。測定範囲が大きい1MPa以上(水圧換算約100mH2O)の高圧用センサでは、最初から空気の通る背面を塞いで密閉しているものあります。 これらのセンサは、シールドゲージ式圧力計や間隙水圧計とも呼ばれています。気圧が変動すると大気開放管を通して、空気が出入りします。その際に空気中の湿気も入ります。特に、地下水位計などは、夏に、水位計本体が冷たく、地上が高温・高湿になるので、 中の水蒸気は、湿度の高い地上部から、冷えた水位計の先端に徐々に移動し、最後は水位計の先端部で結露します。この水分がセンサの電子回路をショートさせます。
また、水位計のケーブルに直射日光が当たり加熱されるような環境だと、昼夜の温度差により大気開放パイプの中で結露が発生します。この水気が徐々に先端に移行すると、数年後には水位計が故障します。
この湿気を防ぐための、一般的な対策は、大気開放管の先端に、乾燥剤入りのケースを取り付け、空気を乾燥剤を通して出入りさせます。 乾燥剤の量にも拠りますが、湿度の高い屋外環境だと1〜2年で乾燥剤が湿気を吸って、効力がなくなります。そのまま乾燥剤を交換せずに放置すると、いずれ水位計の故障の原因になります。
<今後追加予定>
この「大気圧開放ボックス」は密閉した箱の中に水位計のチューブを収め、気圧変動は、伸縮ベローズで間接的に伝えます。空気が直接出入りしないので、中の乾燥剤が長期間効力を発揮します。
乾燥剤の交換頻度の目安は、乾燥剤直結の場合は1〜2年。大気圧開放ボックス使用の場合3〜5年が目安です。 過去の使用例では、ケーブルの出入口のパッキンをしっかり締めて防水した場合、高湿の地下ピットの中で、メンテナンスなしで10年以上機能している例も多くあります。
大気圧開放ボックスの、もう一つのメリットは、水位計のケーブル延長が容易に行える点です。次ぎの画像は、大気開放パイプ入りの水位計のケーブルを継ぎ足した例です。電線以外にエアーパイプやテンションメンバーも継ぎ足す必要があり、現場で接続、防水加工するのは面倒です。また、継ぎ足し部分は、しばしば空気詰まりの原因にもなります。
投込式水位計のケーブルは、空気パイプ入りの特殊電線で、価格も1m当たり¥1,000〜¥2,000円と普通の電線に比べて高価です。これを50m〜100mと延長すると水位計本体の価格より高くなります。
さらに、圧力式水位計は、注文時にケーブルの長さを指定しなければなりません。どうしても余裕を見て長めのケーブルをオーダするので、ケーブルコストがさらにかさみます。
この中継箱を使えば、水位計のケーブルは最低限の長さでオーダし、水面上に出たところで、通常の電線につなぎ替えることができます。
延長ケーブルは、大気開放管の入っていない市販の安価な電線で済みます。屋外で地上ケーブルを長く引き回す場合、大きなコストダウンになります。
このボックスが、一番使われるのは、屋外の圧力式地下水位計のケーブル延長です。本体が地下(≒アース)に設置される投込式の地下水位計は雷に弱い特性があります。 雷のサージ電流が水位計の金属筐体を介して水中に放電し中の電子回路を壊します。
接続ボックスで、地上のケーブルを長く延長すると、誘導雷の危険も高まります。この対策として、ボックス内の水位計接続端子に、雷のサージ電圧を逃がすため避雷素子を入れてあります。
アース接続は、雷の被害の少ない場所では必要ありませんが、雷害の多い地域では、アース棒による接地をお勧めします。単管パイプなどを利用した簡易接地でも、一定の効果はあります。
上で述べたように、投げ込み式水位計は元々雷に弱いので、この避雷素子も完璧ではありません。ただ、一本物の水位計のケーブルを、地上で長々と引き回す場合は、途中に避雷器を挿入することによって、誘導雷の被害を低減できます。
夏の九州や冬の北陸など雷の常襲地帯では、一般的な避雷器に加え電気配線自体を切り離す避雷リレーのような雷防護装置を追加する場合もあります。
⇒スマート水位計の詳細はこちらです。
実際の圧力式水位計の接続例を幾つか示します。雨の掛かるフィールドや、湿気の多い地下ピット内で、防水と大気開放を両立させて、水位計のケーブルを延長接続するのに使います。
もちろん、屋内や計装盤の中に収納して使うことも出来ます。
河川水位 | ディープウエル | 観測井戸ピット | 四角ノッチ |
この製品が一番多く使われる場所は、地下水位や河川水位の屋外計測です。
下図に、観測井戸の地下水位計のケーブルを延長する例を示します。水中や地中に入る部分は、水位計に付属の大気開放ケーブルを使いますが、地上部は現地に合わせて、市販の通信ケーブルで延長します。
【投げ込み式水位計の接続例】正面(地下水位計接続) | 側面(インシロックで単管固定) |
代表的なアンプ内臓圧力式水位センサーは、電圧出力型(3線)と電流出力型(2線)の2種類があります。それぞれの接続例を示します。
電圧出力型の水位計は、大分が3線式です。内訳は、電源プラス(V+)、電源マイナス(V-)、信号出力(S+)の3本です。 距離が短い場合は、そのまま3心の電線で延長できますが、次の場合は「4線接続」に変換して延長することをお勧めします。
•ケーブルが細く電気抵抗が高い 電気抵抗R(Ω/m)
•延長ケーブルが長い。 長さL(m)
•水位計の消費電流が大きい 消費電流I(mA)
3線で伝送すると、電線の途中の電圧降下により、末端の電圧が高めに測定されます。
電圧誤差V(mV)=R(Ω/m)×L(m)×I(mA)
たとえば、断面積0.3mm²の電線(導体抵抗63.2Ω/km)を100m延長し、消費電流4mAの0〜5000mV出力の水位計を接続すると、電圧誤差は
V=0.0632Ω/m×100m×4mA≒25mV
これがフルスケール5000mVの10m計だと、5cmの水位差で誤差0.5%/F.S.に相当します。この程度なら影響は僅かですが、水位計の消費電流が大きくケーブルが長いと誤差が大きくなります。
また、電線の電気抵抗は温度によって大きく変わるので、ケーブルに直射日光が当たり温度が上昇すると、水位の測定値が大きくなる現象も発生します
4線接続で延長する分には、電線の電圧降下の影響は表に現れません。また、電流出力の2線式水位計も、電線の延長に伴う誤差は出ません。
この装置は、単純な器具ですが、以下の3点はトラブルの原因になるのでご注意ください。
ケーブルの出入口が2箇所あり、ゴムパキンで締め付ける構造です。標準品はケーブル径6〜8mm用です。ケーブルが細かったり、太かったりすると、隙間から水が入ります。
細いは融着ゴムテープを巻いて径を調整したり、長期計測の場合は、ケーブルの引き出し口をシリコンゴムでコーキングするなどして、密閉性してください。
【ケーブルの締め付けトラブル例】 注:写真は旧モデルで、現在の物と形が異なります。線が太い 奥まで入らない |
線が抜けた | 線が細い 融着テープ巻き |
出荷時には、箱の中にサンプルでシリカゲルを入れてあります。ただ、保存中に水を吸ってしまうので、直前に電子レンジで乾燥させて、中の粒の青色が復活してからご使用ください
市販の「高分子吸収剤」系の乾燥剤は、一度水を吸ってゼリー状になると、再利用は出来ません。
特に、雨の中で接続作業をして、濡れたまま蓋を占めると、端子台に結露しトラブルの原因になるので、水を十分ふき取り、乾燥剤を多めに入れるなどしてください
過去のトラブル事例で、「蓋を閉めるとき乾燥剤の袋を挟んでしまい、隙間から水が入り水位計が故障した」というケースもありました。とにかく水気が入らないようにご注意ください。
12V用のボックスの定格は、電圧16Vです。これに18V以上の電源をつなぐと、避雷素子が電流を流すようにショートして、電源電圧の低下や避雷素子の発熱・破損が生じます。
逆に、12V水位センサに、24V仕様のボックスを接続した場合、機能はしますが、避雷器の防護電圧が27V以上に上がるので、12V系のセンサに対する避雷効果が期待できなくなります
水位センサの駆動電圧に合った機器をご利用ください。
GWB-012/GWB-024の詳細スペック。⇒仕様書PDF
項目 | 仕様 Atmospheric pressure open box | |
---|---|---|
型式 | GWB-012 | GWB-024 |
対応電源 | DC12V (16V以下) 注1) | DC24V (25V以下) |
対応水位センサ注3) | 電圧出力型 注2) 圧力式水位センサ |
電流出力型 注2) 圧力式水位センサ |
水位計入力 | 3線式 | 2線式 |
延長出力 | 4端子 電源・電圧4線式伝送 |
4端子 電流2線伝送 |
避雷器種別 | 対地間:ガスチューブアレスタ 線間:半導体雷防護素子 |
同左 |
避雷器制限電圧 | 対地間70〜110V 線間18〜24V 注1) |
対地間70〜110V 線間27〜34V |
避雷器 サージ耐量 |
対地間1000A(8/20μs) 線間68A(10/1000μs) |
同左 |
使用温度範囲 | -30〜60℃ | 同左 |
外形寸法・重量 | W160×D120×H115mm, 650g (突起部除く) |
同左 |
単管固定方法 | インシュロック 又は 10mmSUSバンド |
同左 |
在庫 | 標準在庫 | 受注生産 |
注意1:12V用GWB-012に17V以上を接続すると避雷器がショートし故障原因になります。
注意2:12V/24V用は、上限電圧が異なる以外は同じ構造です。電流・電圧型どちらの水位計にも使えます。
注意3:水位計のケーブルはφ6〜8mmを想定しています。太いケーブルクランプ(7〜9,9〜11,11〜13mm)への有償交換も対応しますので、事前にご相談ください。逆に細くて緩いと浸水するので、融着ゴムテープ等を巻いて、しっかり締めてください。
大気解放ボックスの外形寸法は以下の通りです。
⇒外形図PDF形式の表示はこちら
⇒外形図jww形式のダウンロードはこちら
ボックス内部 (実際は乾燥剤が必要) |
ボックス背面 左:標準バンド固定型 右:オプション |
アース棒 (市販品も利用できます) |
延長ケーブル例 FCPEV0.65mm*2P |
GWB-012 | GWB-024 | アース棒 | 延長ケーブル例 注3) |
¥22,000円 | ¥26,000 注2) | ¥3,000円 | ¥150円/m |
標準在庫 注1) | 注文製作 | オプション | FCPEV0.65mm*2P |
●まず、お見積りをいたします。数量、連絡先・必要数、希望納期等をご記入の上、下記、問い合わせ窓口に連絡をください。送料も含めた販売金額と、概略納期を返信いたします。
●「見積書」を確認の上「注文書」をお送りください(FAX,メール,郵送)。
●「支払い」は、納品後に「請求書」をお送りします。
●御社の締日から1ヶ月以内を目安に「現金振込」お願いします。
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