電気検層は、ボーリング孔内に電極を下げ、周りの地盤の電気抵抗(比抵抗)を測定する技術で比抵抗検層とも呼ばれます。 地下の地質は、掘削時のコアやスライムでも確認できますが、地層の区分を電気抵抗という物理量で計測できるため、ノンコアで掘ることの多い削井工事や、 目的の地層を特定する必要のある石油や温泉の掘削、地下水の調査では必須の計測技術になっています。
測定するのは地盤の「電気抵抗」です。電気抵抗の測定は、基本的に測定対象物に2本の電極を設置して「電流」を流し、 その電流が流れた経路の「電圧」(電位差)を測定した値をオームの法則に当てはめて抵抗を求めます。
●オームの法則 抵抗R = 電圧V ÷ 電流I 単位は「Ω(オーム)」
地盤の抵抗は、測定対象物の大きさ(例えば地層の層厚など)によって変化します。電気検層の場合、電極間隔が広がると同じ地層でも電流の流れる範囲が広がり、 測定される「見掛け抵抗値」が小さくなります。この抵抗値を標準化し1m真四角の立方体の両端の抵抗値に換算した数値を「比抵抗ρ(ロー)」と呼びます。 比抵抗の単位は「Ω-m」(オーム・メートル)で、均質な地盤なら測定する電極間隔に影響されず、同一の値になります。
実際の電気検層では、電極が2個だけだと電極と大地の「接地抵抗」が測定値に直接上乗せされてしまうため、電流を流す電極と電圧(電位差)を測定する電極2本を分けて4本の電極を用いた4端子法で抵抗測定を行います。
代表的な電極配置には2極法と4極法がありますが、いずれも4本の電極を使っています。これらの方法で測定した「見かけの抵抗値R」から「地盤の真の比抵抗値ρ」への換算は次式になります。
●電気検層の比抵抗値換算式 ρ(Ω-m)=4πaR=4 × π × a × R
なお、測定対象物が半分になる「地表電気探査」では、換算式は下記になります。●電気探査の比抵抗値換算式 ρ(Ω-m)=2πaR=2 × π × a × R
a:電極間隔(m) π:円周率 3.14
地盤の比抵抗と地質の間には、大まかに次のような関係があります。
基本的には、電流を流す2本の電極と、電位を測定する2本の電極を使います。その4本の電極のうち、何本を掘削孔内に降ろすかによって、次の3種類の電気検層方法があります。
●2極法(ノルマル配置) ←配置図を表示
●4極法(ウエンナー配置) ←配置図を表示
●3極法(ラテラル配置) ←配置図を表示
このうち「3極法」については、昔は、薄い地層の検出感度が高いなどの理由で使用されることもありましたが、現在ではほとんど使われいません。
2極法と4極法は一長一短あり、用途や保有機材、あるいは使用する人の技術の習熟度に応じて使い分けられています。
次の表に2極法と4極法の違いをまとめました。
一般的な削井や深堀アースの工事では、手動計測に4極法(ウエンナー法)が用いられています。
自動検層器を使用することが多い調査ボーリングや石油・天然ガス、温泉の掘削現場では2極法(ノルマル法)が使用されています。
図-5.電気検層の主な電極配置
区分 | 比較項目 | 2極法(ノルマル配置) | 4極法(ウエンナ配置) |
---|---|---|---|
電極配置 | 孔内の電極数 | 2極(2心線) | 4極(4心線) |
地表の電極数 | 2極(遠方電極) | 無し | |
測定作業 | ケーブルの太さ | ○ケーブルが細くて済む(大深度向き) | △ケーブルがやや太くなる(浅層向き) |
電極長さ | ○電極が小型化できる(1m) | △電極部分が長くなる(3m) | |
地表電極 | △地表電極の設置が必要 | ○地表電極の設置が不要 | |
測定トラブル | △地表電極の接地状態が影響 | ○腐食・断線なければ測定値は安定 | |
知識・技能 | △電気検層の基本知識必要 | ○道具さえそろえば、測定は容易 | |
測定精度 | 薄層検出 | ○薄い地層の検出能力が高い | △薄い地層の検出能力は低い |
電極間隔以下の薄層検出 | △電極間隔より薄い地層では、抵抗値の反転現象(影)発生 | △反転現象は少ないが、薄層の抵抗値は、ぼやける | |
側方の測定精度 | △孔壁より外側の抵抗値は、孔壁付近の抵抗値の影響を受け易い | ○孔壁より外側の抵抗値は、孔内の泥水や孔壁の抵抗値の影響を受けにくい | |
用途 | 主な用途 | ・深度300mを越える電気検層 ・薄層検出の必要な小口径の地質調査ボーリング ・自動検層器 |
・深度100〜200mの電気検層 ・薄層検出の不要な、井戸やアース工事などの大口径のボーリング ・手動検層 |
総合比較 | 電極配置や機器操作に、若干の経験と知識が必要なため、地質調査、資源掘削などコンサル向き。 | 誰でも測定ができるので、一般的なさく井やアース工事、簡易的な調査ボーリングに適する。 | |
検層イメージ | 2極法−自動検層器 |
4極法−手動測定 |
日本国内では電気検層技術の海外からの輸入過程で、電極配置が「さく井工事」と「調査ボーリング」で異なる方式が導入され、 さらに自動検層器を使用するかどうかで、次のように測定方法が分かれています。
●300m以浅の削井現場では、4極法による手動測定が主流です。
●300mを越える深度の井戸や温泉では、2極法の自動検層器が使用されます。
●地質調査ボーリングでは、多くの場合2極法の自動検層器が使用されます。
国内で販売されている主な自動検層器は2極法を採用しているため、自動検層器を使用する場合は必然的に2極法になります。
逆に手動測定の場合、地表の「遠方電極」の設置トラブルが少なく、測定データのバラつきも少ない4極法が多く利用されています。
→検層ケーブル製品の詳細はこちらへ
それぞれの電極配置で電気検層を行う場合の、検層器と検層ケーブルの接続方法を示します。
接続図は電気検層器「井戸パック10」を例示していますが、
他の装置(例えば、大地比抵抗測定器3244型)でも同じ配線になります。
なお、2極方(ノルマル配置)を使用する場合は、地表の遠方電極(電流、電位基準電極)の設置が不完全だと、測定誤差が大きくなるのでご注意ください。
→2極法の注意点はこちらを参照
実際の電気検層の特記仕様書には、通常、電極間隔を変えてショート・ロング2種類(0.5m、1m)の測定を行うように指定されています。
調査系のボーリングにおいては、3種類(25cm、50cm、100cm)指定される場合があります。石油系では16インチ,64インチ(40cm、160cm)の場合もあります。
電極間隔を変えて測定するのは、
・短い電極間隔の測定値は、孔内の泥水の影響を受けている。
・長い電極間隔の測定値は、より地層内部の真の抵抗値に近い。
この2種類の、電気抵抗の差は、泥水の進入度合いにも関係するため、地層の透水性や地層の真の抵抗値を推定する資料となります。
電極間隔の異なる比抵抗値を測定するには、電極間隔を変えて、2回以上検層ケーブルを上げ下げして測定する必要があります。 作業時間を短縮するために、複数電極を1本にまとめ、電極切替スイッチで、交互に測定する方法が多くなってきています。
ブレーカを使った切替器 | 切替スイッチと検層器 | 電極切替スイッチの製品例 |
ケーブルの心数は一般的に次の通りです。
●2極法: 電極間隔0.25,0.5,1.0mの3種類切替で、4心線使用。
●4極法: 電極間隔0.5, 1.0の2種類切替で8心線使用。
電気検層器に電極間隔切替スイッチを接続する場合の配線例を示します。
図-8.電極切替スイッチの使用例(4極法) | 図-9.電極切替スイッチの使用例(2極法) |